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『ほら、ちゃんと食え。

さあ、食え。』

と、

俺にあれもこれも食わせようとして

たくさん注文してくれるのはいいが

『いくらなんでも食べきれないよ。』

俺は量を見てドン引きしていた。

『なに言ってるんだよ。

若いんだからこれぐらいは入るだろ。』

って、先輩が言う。

貧血と栄養失調と診断されて

連れてこられた居酒屋。

つまみばかりを注文して

テーブルの上はひしめきあっていた。

大体、栄養着けるって言ったら

この時期は鰻じゃねえのかよ。

って、思いながら

俺は、箸で料理を突っついていた。

『そう言えば………

先輩でしょ…………』

「お前は病気だから

アルコールはダメな。」

と、自分だけ旨そうにビールを飲んで

“意味がわからない”と言う顔をする先輩に

『とぼけちゃって………

先輩がニノに言ったんでしょ。

俺のこと、

だから…………』

「だから、ニノがやって来たんでしょ。」

俺は、泡の出ないビール(麦茶)を飲みながら

先輩を恨めしそうに見つめた。

『ああ…………

そのこと……ね…

二宮くん来ただろ。』

と、先輩は焼き鳥にかぶりついた。

『ええ。

昨日の夜ね。

もう寝ようって頃に……』

と、俺はわざと嫌味を言う。

『そっか、

俺と別れた足でそのまま行ったんだな。』

ニヤニヤと臼笑みを浮かべながら

また、ビールをゴクリ。

「暑い日はこれに限る。」って

泡を口の周りにつけている。

わざとか………

『ええ。

そのまま泊まってもいきましたよ。』

と、ひねくれた言い方をした。

『ふーん。

だから、朝素麺だったんだ。

お前だけだったら

コーヒーだけだったかもな。』

って、泊まった話は軽く流された。

『そんなことないですよ。

ちゃんと食べますって………』

『あの空っぽの冷蔵庫でか？』

『…………………』

なんで、冷蔵庫の中身まで知ってるんだよ。

なんでもかんでも

先輩には敵わないってことか…………

なんだかちょっと不貞腐れて

食べ物にいたずらしてた。

すると

『兎に角、ちゃんと食べろよ。

食は基本だからな。』

と、俺の方に刺身や鉄板焼を押し付けてくる。

『こんな食えないって

………って、違うだろ。

話が反れてる。

俺が言いたかったのは………』

と、俺の声がデカくなった。

『…………言いたかったのは？

……………なに？』

先輩の手が止まって

俺が何を言い出すのかと気にしてるみたい。

だから、

『せ、先輩……に………

……………………ありが………とう………

…ってこと……………』

そう言うと、プイッとそっぽを向いた俺。

『はああ？』

一瞬、なに言われてるのか分からない先輩。

『だから、

俺が自分の殻に綴じ込もって

言えなかったこと。

ニノたちはそんなこと全然気にしてなかった。

俺は、どんな俺でも俺だって

大事な親友だって

言ってくれた。

だから、ありがとうって言ってるの。』

俺は、不貞腐れながら

そっぽ向いて感謝するもんだから

『ふ～ん。

そっか。』

って、なんか変な笑い方をして

『なら、よかった。』

と言って

3杯目のビールを注文してた。